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"文学少女"シリーズ1~8(再読)

新しいのを読む気にならないから、前に面白かった奴を読もうってことで、文学少女シリーズを読み直しました。

文学少女シリーズは、野村美月の著作で、本編は全8巻。
1作目の感想の日付を見ると、読み始めたのは三年半前みたいですね。もうそんなに経ってるんだなー……。
たぶん、小説のシリーズものをこれだけ集めるというのはこれからもしばらくはないかも。

1 文学少女と死にたがりの道化(ピエロ) 3/27
初回感想記事はこちら

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)
 この本のおかげで続きを読みたくなったこともあり、結構覚えている自信があったんですが、結末だけしか覚えていませんでした。

 というわけで、文学作品をなぞるようにして登場人物たちが巻き込まれていく事件を、ミステリー仕立てに読ませる、文学少女シリーズの第一作目。
 わけあって美少女作家として注目され(男なのに)、わけあってペンを置き、わけあって引きこもりを経験したこともある井上心葉。彼は、本を「食べてしまう」ほど愛している文学少女、天野遠子先輩に引っ張り込まれ、文芸部に所属している高校二年生です。
 二人を中心に展開するコメディ色の強い前半と、人の生死まで関わる後半の対比で読者を飽きさせません。

 読んだ当時は精神的に疲れの溜まっている時期だったので、登場人物の一人の、竹田千愛にかなり感情移入してました。今回も、当時ほどではないですが、竹田の感情を中心に読みました。
 このストーリーでの題材は、太宰治の「人間失格」。その文体や文章をなぞり展開していく面白さ。
 やっぱりコンセプトがいいですね。
 そして肝心のストーリーの方も、途中から影の薄れた登場人物が、うまいこと最後に表舞台に上がってきたりして、楽しませてくれます。

 このシリーズは、2巻がかなり微妙で、3巻が面白かった記憶があります。そこからは、前の本より今回の、という具合にどんどん面白くなっていく感じですね。(短編集の6巻除く)
 これの出来が悪ければ、2巻を飛び越える元気がわかなかった気がする。


2 文学少女と飢え渇く幽霊(ゴースト) 3/30
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”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
 これは、一回目に読んだ時よりも、随分いい作品に感じました。一回目に読んだのは、まだ5段階評価で感想書いてた時で、星3つつけてましたから、不思議ですね。今は、死にたがりのピエロよりも、こっちのほうが好きかも……。

 今回は、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』が題材となっています。この本で初めて存在を知りましたが、人間失格同様、怖そうなので、ぱらっと序盤を読んだだけで棄権。
 遠子先輩の下宿先の子供(っていっても心葉の一学年下)、櫻井流人、その流人が惚れた雨宮蛍、そして蛍の後見人で、会社乗っ取りなど良からぬ噂の尽きない黒崎保。この三人が中心となっています。愛情のすれ違いによる烈しい復讐劇が下地となっているようなので、これらの登場人物に対して、なかなかに優しくない展開。

 一回目を読んだ時は、この悲劇的な展開が好きになれず、気分が塞いだだけで終わりましたが、二回目となる今度は、結末をあらかじめ知っているので心の準備ができ(内容はピエロと同じくほとんど忘れてました)、余裕を持って読むことが出来たのが、良作と思えた一因かもしれません。
 蛍がただの被害者でなく、かなりの熱情を持っていた人間として読め、生きざまに哀れさを感じなかったのと同時に、エピローグで書かれた例の三題噺が、とても、楽しげで、そっちが真実であってほしいとも思えもして。哀しくなって、それがいい余韻となりました。
 最後まで読んだ今は、ななせの険のある態度が、ただのツンデレじゃないと分かってますし、そこにも苛々しませんでしたから。


3 文学少女と繋がれた愚者(フール) 4/1

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

 題材は武者小路実篤の『友情』。
 題材の選び方通り、今回は、友達の話。シリーズ当初から、遠子先輩以外と深く付き合うのを避けている主人公の井上心葉と、そのクラスメイトの芥川一詩がメインです。

 心葉と芥川の二人とも、事情は違えど、過去の出来事に「繋がれた愚者」。自縄自縛の状態であるところが共通していて、過去に繋がれたまま、その深い共感によって今に繋がっていくのを、どきどきさせながら読ませてくれる作品です。
『いつか壊れるかもしれない関係なんて、最初からないほうがいい』
 遠子先輩に子供のように泣き言をぶつける心葉が、どうしようもなく情けなく、だけど生きている。そんな心葉に共感してしまう。そして自分が卒業したあとの心葉のことまで気にかける、遠子先輩がかっこよすぎます。

 やっぱりここから盛り上がっていきますねー。再読なのに、最後の遠子先輩の語りや、芥川と心葉のやりとりは、涙線が危なかったです。三年前と同じところにやられてる。
 で、この巻の合間合間に登場していた記述が、5巻への伏線となることを表明した最後の一行。初見の時はかなり強烈でしたね。


4 文学少女と穢名の天使(アンジュ) 4/5

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)
 題材はガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』。これも未読ですねー。この作者さんは本当にいろんな作家のいろんな物語を知っていて、小説を読む人間として素直に尊敬できます。

 今回は、心葉のクラスメイトの琴吹ななせと、その親友の水戸夕歌、音楽教師の毬谷敬一など、いろいろな人物が絡んで、展開や各登場人物の行動のワケが読み取りにくくなっています。
 そのぶん、クライマックスの展開でいつものように遠子先輩が語る"想像"によって、張り詰めてきた伏線がひといきに解かれて、出来のいい過去の三作よりも上のレベルの感情の揺れを起こさせられます。ここからはもう最後の巻までこの出来だったように記憶しています。

 最後のシメではやっぱり活躍する遠子先輩。だけど、全体を通してみれば活躍する場面は少なく、一歩引いている場面が多いです。卒業を控え、心葉との距離感を適切に保とうとしている彼女を意識させられる話にもなっています。心葉やななせのことを考えて、距離を保とうとしてても、やっぱり保ち切れていない感じが、続刊でもいいエッセンスになっていました。……たぶん。

 相変わらず、既読のはずなのに、内容が頭から抜けていたので、初めて読むかのように読み込んでしまいました。


5 文学少女と慟哭の巡礼者(パルミエーレ) 4/6

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)
 いよいよ物語も佳境。繋がれた愚者や、穢名の天使……というか全ての巻とも繋がる話です。
 心葉の目の前で飛び降り自殺を試み、彼の心の大部分を占めてきた朝倉美羽。心葉視点で語られてきた朝倉美羽とは違う、心葉が今まで決して目を向けようとしなかった朝倉美羽が、序盤から暴れ回ります。
 人生最大のトラウマである美羽に逆らえず、いいように扱われる心葉。その結果、いままで積み上げてきた人間関係にも支障をきたし始めてしまいます。
 心葉は、過去と決別し、新しい始まりへ踏み出せるのかどうか。
 そこを描いて、番外編を挟んでのエピローグへ入っていきます。

 題材は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。この小説を読み終わった後、文庫を買って読み返しましたが、子供の時に読んだ時よりもずっと、心に残るお話でしたね。
 人にあこがれる気持ちを、ジョバンニがカムパネルラへ向ける気持ちと重ね合わせて語り、お互いに想い合う気持ちをこの二人の関係性に重ねて語り……。綺麗なだけでなく、身に迫る哀しさがラストに控えている『銀河鉄道の夜』などの宮沢賢治の著作が、とてもうまく、引用されていました。


6 文学少女と月花を孕く水妖(ウンディーネ) 4/9

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

 本編だけど、夏休みの番外編。題材は泉鏡花の小説。
 遠子先輩と心葉が、麻貴先輩のわがままに付き合わされて何日か夏休みを一緒に過ごす話です。
 遠子先輩がいろんな表情を見せてくれます。が、言ってしまえばそれだけのために作られた話で、ストーリー的にはあんまり印象に残らない。
 7巻と8巻序盤で心葉にイライラさせられる伏線になる、くらいですね。


7 文学少女と神に臨む作家(ロマンシエ) 上  4/10
初回の感想記事はこちら

“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)
 最終章、上下巻の上巻。題材はアンドレ・ジッドの『狭き門』。
 遠子先輩の生い立ちが明らかになります。
 前の感想を見ると、初めての時は結構、どきどきして読んだみたいです。ただ、いまみたいにシリーズ通して読んできてると、心葉が鬱陶しいですね。遠子先輩が少し自分勝手な発言したくらいで「裏切られた!」ってなんだよと。3巻、5巻と、かなり助けられているのにね。あの遠子先輩がこんなことを言うなら何か裏があるはず、くらい思ってもいいんじゃ……。
 一人称なので、主人公に違和感を覚えるときついですね。最終巻に期待します。


最終巻 文学少女と神に臨む作家(ロマンシエ) 下  4/11
初回の感想記事はこちら

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)
 上巻は再読はあんまり印象良くなかったですが、下巻は前回と同じように、きれいに終わったと感じられました。心葉がやっと素直に自分の気持ちを認めてくれましたからね。
 途中まで読んでラストを思い出したので、大きな感動とかはなかったですが、やっぱりこのシリーズは集めてよかったです。作中で語られたとおり、醜悪な一面を認めたうえで、そのうえで、希望や幸せな未来すらも書けてしまうのが小説のいいところですよね。優しい気持ちになれました。


 というわけで、シリーズ感想終わり!
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