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〔本感想〕 物語の役割/小川洋子 ◆ 現実は、その人自身の生み出す物語によって作り変えられることもある


 国内作家をあるていど知っている方なら小川洋子の名前で作品名が色々とでてきそうですが、さほど縁のない方に作者として伝わる可能性があるとすればおそらく『博士の愛した数式』でしょう。

 そう紹介する私は未読なのですが、『博士の愛した数式』というひとつの愛すべき物語が小川洋子の筆先に宿る瞬間を書いた文では、作品を未読でも、そのとき彼女が抱いたであろう高揚感が伝わってきます。彼女はひとつの作品の誕生を話の始まりにすえて、物語が現実世界で果たしている役割について、反対に現実世界が物語で果たしている役割について語ってゆきます。

 自分や他人によってつくられた物語が、自分や他人を痛めつける凶器になり得ることの恐ろしさをしっかり指摘したのが、ひとつ前にレビューを書いた『人はなぜ物語を求めるのか』だとするなら……。人がつらい現実を受け入れるために物語を生み出して自分の心を救おうとする働きを肯定的に評価するのが『物語の役割』です。
 あちらは2017年に出た本、こちらは2007年に出た本ですが、面白い偶然の一致が感じられるので、二つ合わせて読めばより楽しめる気がします。「現実は物語を通して理解される」という見方は同じで、意見が対立しているわけではなく、それぞれが、物語のもつひとつの側面を引き出しています。現実と物語は不可分であるという物語が、信じるに足る物語になっていくのが感じられるかもしれません。
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