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〔本感想〕 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ ◆ 中学最後のコンクールで、麗奈の流す悔し涙が理解できなかった久美子。高校生になった久美子は、あのときの彼女の涙を、少しずつ理解していく。

 中学最後のコンクール。
 金賞だが関西大会へ進めない「ダメ金」という結果を前に、悔しさのあまり泣きじゃくる麗奈。
 久美子はそれほど悪い結果だと思っていなかった。金賞に満足していたから、麗奈の涙が理解できなかった。
「……本気で全国行けると思ってたの?」
 皮肉でもなんでもなく、久美子は単純な疑問を口にした。
「アンタは悔しくないわけ?」
 麗奈は、久美子をなじるように言葉を返した。

 翌年、久美子は京都府立北宇治高校に進学する。吹奏楽部はやめようと思っていたはずが、仲良くなったふたりに流され、結局入部することに。音楽室に向かうと、そこには「あの」麗奈もいた。

 ぬるま湯の部活に新しくやってきた厳しい指導を行う優秀な指導者(指揮者)、それによって様々な軋轢を生む人間関係、ついていけずついに出る退部者、などなど、部活ものの王道の展開です。
 ただ、この作品はそういった部活に縁のなかった人間にも、入り込みやすいように作られています。

 まず主人公・久美子の性格がいい。ユーフォニアムを演奏するのが好きだけれど、かつての経験から、生まれが1、2年違うだけの人間が絶対的上下関係を築く「部活」というものがあまり好きじゃない。人並みの喜怒哀楽をもち、流されやすさもありながら、どこかで冷めた視線も持っていて、対人関係に深く入れ込まない。
 初めて麗奈とじっくり話すことになる場面、冒頭での発言を持ち出されて久美子は弁解します。麗奈に『無意識でこんなこと言えるなんて』『よっぽど性格ねじ曲がってるなって』思った、と言われる主人公。なかなかです。ただ、麗奈はその久美子の性格に興味を持ち、好意的にとらえています(久美子が、ユーフォニアムに対してきちんと愛情を持っているという前提で)。もちろん一読者の私も。

 努力の報われる保証のない場所で、ひりつくような緊張感をもってやることの楽しみが、ごく控えめに描写されているところもいいですね。顧問の滝の指摘は、80名近い部員が一堂に会する合奏中でも容赦がありません。駄目なところは何十回でも繰り返しやらせます。一部の部員たちは滝がいなくなると同時に、彼のことを非難するほど。しかし彼の指導の効果はすぐに表れ、確実にうまくなっていく。
 滝のもたらす緊張感、衆人の前での演奏のもたらす緊張感におののきつつも、久美子はどこかでそれを楽しんでいます。

 久美子というやや冷めた視点の持ち主が、「部」への忠誠心ではなく、ユーフォニアムを吹くことをもっと楽しむため、真剣に取り組むようになる。そして楽器に対して礼を尽くした久美子は、あのときの悔し涙の理由を理解する。
 真剣にやることの楽しさが説教くさくなく描かれていて、バランスの取れた青春小説でした。
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