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〔本感想〕 移民の経済学 ベンジャミンパウエル他

◆ 移民についてまわる感情的な言説の真偽を、データで検証しようと試行錯誤する。アメリカ経済学者たちの苦労が垣間見える一冊

 現在の国際的な話題は移民、あるいは難民問題に集中しています。
 感情的対立が激化する状況で、ひとつ数字に基づいた議論をしてみようじゃないかというのが本書のテーマだと思います。
 ちなみに不法移民が1000万人を超えているアメリカについての話なので、他国にも通じる内容ではないことをはじめに書いておきます。

 この本にはさまざまな研究者が寄稿していますが、経済学者のあいだでも移民に関する意見は割れています。世界一の経済・科学大国アメリカですらも、絶対的に信頼できる数字がないなかで、試行錯誤している様子がうかがえます。
 国境を開放すれば利益が国庫に入ってくるとデータに基づいて主張する人が続く。なんだ、アメリカは移民を受け入れればいいじゃないかと楽観的になるデータが続いたあと、冷静に、そんな夢物語はあり得ないと反対する人間もいる。ブレーキが少し足りない気もしますが、バランスがわりといいんですよね。

 ひとつだけ合意がなされていることは、移民が経済に与える悪影響は少ない、というところでしょうか。経済以外の部分では研究が待たれる……という留保付きで。移民を受け入れる側の自己都合な上から目線にちょっと辟易しますが、経済以外の面での議論を進めるべき、それが示唆されているだけでも大きな前進ではないでしょうか。


 以前、グローバル経済について、ニュース番組で解説されていた話をなんとなく思い出します。経済は資本と労働力のバランスで成り立っているが、労働力の移動が難しいのに対して資本は移動が簡単なため、資本の呼び込みで国家間競争が起こっている。資本(や資本を持つ者)が税制上の優遇を受ける一方で、各国の歳入は減り、移動する資本から労働者が取り残され、格差が進んでいる……と。

 それと合わせて考えると、各国間での労働力の移動を促進すれば、資本の移動による不利益が軽減され、少しだけましになる……。ような気もしますが、これはきっと素人の単純化ですね。
 日本でも外国人実習生制度が破たんの兆しを見せていますが、翻訳者が言う通りおそらく議論すらタブー視されています。「移民」と聞いただけで「何が何でも反対」「何が何でも賛成」にわかれて、議論のたたき台になるデータすら示されていない状況。移民政策にも段階があるので、解放か封鎖かという2択にする必要はないようなんですけどね。

 これはトランプ大統領誕生の一年前に書かれた本ですが、移民嫌悪の空気のなかで、それに逆行する議論を積極的に提起していく人々がいるのが、アメリカの強さですね。なんでもアメリカが優れているわけじゃありませんが、感情よりも検証可能なデータで物事を推しはかろうとする人たちの数では、やはりまだ離されているのかもしれません。
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