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〔本感想〕 写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル3 北森鴻

写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮エンターテインメント倶楽部)

◆ 鳥居の起源に迫るかと思えば、ある画家と写楽の表現技法を結びつける。民俗学ミステリーならではの守備範囲の広さを楽しめる一冊。

 民俗学者の蓮杖那智は東敬大学に研究室をかまえる異能の助教授。怜悧な考察に裏打ちされた徹底したフィールドワークを身上としており、その行く先々ではトラブル続き。今作もまた、彼女の周りを死が取り巻きます。
 2巻からは心のオアシス佐江、よき相談役・高杉が加わり、負担が分散されたとはいえ、もっとも大きな気苦労を背負うのは相変わらず助手の内藤三國。ときに那智への殺意にも似た嫉妬に駆られつつ、少し褒められれば那智への忠誠心を比類のないまで高まらせる、押しの弱い青年です。
 この四人がそろうと怖いものは何もないという感じで、部室ものライトノベルに通じるような安心感がありますね。

 今回はタイトルにもなっている表題作『写楽・考』が紙幅の半分を占めています。他の短編『憑代忌』『湖底祀』『棄神祭』はそのぶんぎゅうぎゅうと押し込まれているかたちです。それだけに、那智や高杉の鮮やかな推理が炸裂して瞬く間に謎を切り崩していく様子はより爽快に感じられるかもしれません。

 第二編の『湖底祀』は、湖底に眠る鳥居の謎をめぐるもの。石牟礼道子の句に「湖底より仰ぐ神楽の袖ひらひら」というのがありましたが、水中に沈んだ遺物が沸き立たせるこの気持ちはなんなんでしょうか。
 もちろん現実はそう甘くはなく、ひどく即物的な落ちがつく事件でした。が、鳥居の成立から進んでいった連想があるところまで飛躍していったとき、やはりこのシリーズの醍醐味はこういう自由な知的探訪だなと思わされました。ある事実と「写楽」の独特の画風を結びつける表題作の発想の飛躍もそれに負けず劣らず楽しめます。
 自分の知識と対決させるもよし、登場人物の思考に身をゆだねて発想の流れゆくさまを楽しむもよし。古事記や日本書紀という文字を見るとちょっとわくわくしてしまう方なら、迷わず読んでほしいシリーズですね。
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