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〔本感想〕 マヤ・アステカの神々 土方美雄

マヤ・アステカの神々 (Truth In Fantasy)

◆ 生け贄をささげることによって「第五の太陽」を維持しようとしたアステカの人々

血を求めるマヤ・アステカ文明圏の神々
 アステカ帝国の中心都市テノチティトランは、コンスタンティノープルやローマといった各都市に滞在したスペイン軍の兵士たちから見ても、比類のないほどすぐれた都市だったようです。いっぽうでアステカは大量のいけにえを必要とする祭祀を行い、スペイン人はその祭祀に接して「邪教徒」として攻撃します。
 高度な文明と血なまぐさい祭祀。そんなアステカの基盤となっていたのは、マヤ・アステカ文明圏の神々です。

 アステカの神は「第四の太陽(世界)」が滅ぶまでに多くの犠牲をはらい、「第五の太陽」を生み出した際には、二神がそれぞれ火に飛び込んで一度死にました。そのため、人間が犠牲を厭うわけにはいかず、神々を祭るたびに生け贄をささげています。

 アルファベットの持ち込まれた際に先住民が記述し、スペイン人によって写本されたという『ポポル・ブフ』。こちらはグァテマラ・マヤ文明のキチェ族に伝わる神話・伝承をまとめたものだそうですが、『ポポル・ブフ』にはトヒールと呼ばれる神が登場し、そのもとへ火を与えてほしいと諸部族がやってきます。トヒールは、胸を切り開き、心臓をえぐり出してささげる生け贄を要求し、生け贄をささげた部族には火を与えたそうです。

部族神・ウィツィロポチトリ誕生神話の再現
 酷似する神話を多数もつアステカには、まさに生け贄の心臓をえぐり出してささげる儀式が年に何度もありました。
 生け贄はその後バラバラにされ、大神殿から投げ落とされました。これはアステカの部族神・ウィツィロポチトリの誕生神話が関係しています。ウィルツィロポチトリは、彼を腹に宿した母コアトリクエ殺害を目論む神と、誕生直後に戦いました。その際、コアトリクエ殺害を目論んでいた神が殺された方法が、まさに生け贄と同じなんです。

 人々は決して残虐な殺戮行為を楽しんでいたわけではなく、誕生神話を再現していたことになります。ちなみに、メキシコシティーにあるというコアトリクエの像のイラストが載っていました。著者の解説にしたがって書くと、像は切断された首が腹のあたりにあり、腰から下はその血で濡れています。そして首のあるべき位置から二本のヘビが這い出し、バラバラにされた手足が首飾りとなっている、ものすごい像です。
 生け贄の肉は参加者によって食べられたこともあったようです。加えて生け贄の死体の生皮を剥いで着るということも好んで行われましたが、それは豊穣を約束する神「シぺ・トテック」に敬意を表してのものでした。

高度な文明と残虐性は並立し得る
 このように、アステカの人々にとってはすべてに正当な理由があり、生け贄はただ殺されて粗雑に扱われた被害者と言うわけではなく、文明を維持していくための重要な役割をもつ存在でした。
 神々とのかかわりの中で天文学が発達し、365日=1年の太陽暦が発明され、数十万人が身を寄せ合った大都市がつくられる。「第四の太陽」までと同じようにいつか滅んでしまうだろう「第五の太陽」の世界を維持するため、神の誕生神話を模した祭祀を繰り返し、火に薪をくべ続ける。
 これを「素晴らしい!」と絶賛するようなマッドな思想は持ち合わせていませんが、彼らにとってはこれは合理的な行為だったということがわかり、とても納得がいきました。善悪両面を併せ持つ神々と、同様の生き方をしていたんですね。

 著者は、残忍な「悪魔の所業」を行うアステカを滅ぼしたスペイン遠征軍についても触れています。アステカ人から財宝を略奪し奴隷化、反攻する先住民を皆殺しにしたことが「悪魔の所業」として省みられることはなかった、と皮肉を書いています。
 商人の語源となったともいわれるほど交易を積極的に行い、最新の文物を生み出した中国の古代王朝・商(殷)も、奴隷をわざわざ支配権の外から連れてきて、祭祀のために殺しています。残虐な営為を含んでいても高度な文明は築きうるし、高度な文明だからといって残虐性が消えてなくなるわけではないんでしょうね。

 神話や伝承・個々の神についての記述のほかにも、マヤ・アステカ周辺の都市国家の興亡史、各都市の王の人物伝、アステカの祭祀、アステカ王国の終焉、と、かなり詳細な情報が入手できる一冊になっています。おすすめです。

第1章 マヤ・アステカの歴史と文化
第2章 マヤの神々
第3章 グァテマラ・マヤ人の神話『ポポル・ヴフ』の世界
第4章 現人神としての王~マヤ王国盛衰記~
第5章 ユカタン・マヤ人の神話と予言の書『チラム・バラムの書』の世界
第6章 メキシコ中央高原の神々
第7章 アステカの祭祀
第8章 アステカ王国の終焉
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