スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

〔本感想〕 秋の花 北村薫

◆ ラストシーンから始まる

 大学生の「私」と落語家の円紫さんが謎を解決していく、シリーズ3作目。今回は短編集ではなくひとつの長編です。
 今までは人が死なない話でしたが、この『秋の花』では「私」の近所に住んでいる高校三年生が、学校の屋上から転落して亡くなってしまいます。事故とも自殺ともいえない状況。大学生活も残すところあと一年と少しとなった「私」の前に、少しずつ謎をとく鍵がそろってきます。

 円紫さんの落語が結末を暗示し、最終的には円紫さんによって解決される大まかな流れは変わりません。しかしこの謎解きもあくまで生活の一部です。亡くなった少女と残された親友、未来を断たれた彼女を通してこの先のことについて考える「私」。また、「私が大学生だったころ、」として思い出されるだろう様々な風景がひとつひとつ描かれています。

 やるせない結末は物語の中の登場人物の人生に、これから先もずっと大きな影響を与えて残り続けるでしょう。「私」の考えている通り、謎を解決するよりももっと難しい問題そのものが、まだ始まったばかりですから。その始まりを示した最後のページでは、亡くなった少女の母親が「私」と円紫に、穏やかな言葉をひとことだけ告げて、幕が引かれます。

 と、ここまで書いて気づいたのですが、このシリーズの話は終わるところですっぱりと「解決」するのではなく、終わるところで始まりを書いていることが多いですね。人が亡くなっても亡くなった彼女の物語ですら途切れずに続いています。
 終わらずに続いていくところが、このシリーズの良さかもしれませんね。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。