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〔本感想〕 古代から中世へ ピーター・ブラウン著 後藤篤子編・訳

古代から中世へ (YAMAKAWA LECTURES)

◆ 西ヨーロッパ文化圏における持たざる者への救済のはじまりに、キリスト教の果たした役割

「古代末期」研究とピーター・ブラウン(文・後藤篤子)
貧困とリーダーシップ
「中心と周縁」再考
栄光につつまれた死

 の4章からなるピーター・ブラウン来日時の講演・講演原稿をまとめた一冊。
 編者/訳者の後藤篤子氏がとにかく素晴らしい仕事をなさっていて、講演録とは思えない、ひとつの書籍として堪えうる文章構成になっています。

「古代末期」研究とピーター・ブラウン / 後藤篤子
 編者/訳者によるピーター・ブラウンの説明。
 はじめは読み飛ばそうかと思ったけれど、読んでおくとあとのページがより理解しやすくなります。

貧困とリーダーシップ
 それまではもっぱら所属する都市へ資金を注ぐことが美徳とされていたものが、キリスト教の国教化によって変化が起きていく。貧者への救済が始まるに際してキリスト教の果たした役割を概説したもの。ローマ史には疎くほとんどの人名がわかりませんでしたが、それでもあるていど理解できたのでかなりわかりやすいです。
 人々が宗教集団に属した理由は、やはり王権や国家という枠組みが福祉に手を付ける前の時代、生きるためのひとつの手段としてというのが大きかったんでしょうね。その辺はヨーロッパでも日本でも変わらないような気がします。

 貧困と聞いて想像されるものが「着るものもなく裸で震え、飢えに苦しむ」ような極貧者だったのは、税を免れている教会の人々が、自らが特権を得るにふさわしいと劇的にアピールするために打ち出されたイメージだったというのもおもしろい。日本も早く「着るものもなく裸で震え、飢えに苦しんでいる」極貧者以外を貧困と認めにくい、昭和20年~25年くらいに設定した基準から脱却できるといいですね。

「中心と周縁」再考
 ローマ帝国崩壊後、その文化がどのような形で継承されたのかを論考したもの。ただ一本の大河によってではなく、無数の細流によって。クモの巣のように中心から周縁へではなく、無数に独立した天体として、と、著者は表現します。
 歴史の叙述がなされる際には、ひとつの大きな流れでくくってしまいがちです。説明しきれない小さな違和感を無視してはいけないと教えてくれる論考でした。

栄光につつまれた死
 大罪と小罪との区切りが取り払われたその瞬間、死の概念から神秘性が引きはがされた意味を考察したもの。


 深いところへの言及や人名乱舞のわりに、短くまとまっている(141ページ)ので、興味を広げるきっかけとしてじゅうぶんに役立ってくれるだろう一冊。
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