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〔本感想〕 空飛ぶ馬 北村薫

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

◆ 日常ミステリだけれど、ミステリ以外の描写もきちんとされているので、謎をほったらかしにしておいても読める。

 『日常の謎』の先駆けといわれるのをときどき目にする北村薫、そのデビュー作にして『円紫さん』シリーズの第1作。

 落語好きな女子大学生・「私」が、大学卒業生のインタビューを介して中年落語家・春桜亭円紫と知り合う。
 彼女をインタビューの場に誘った大学教授が子供のころに悩まされた『織部の霊』。喫茶店で怪しげな動きをしている女3人の目的は? 『砂糖合戦』。『胡桃の中の鳥』では旅情豊かに蔵王の山林を、『赤頭巾』では後味の悪い森の中の出会いを描く。謎解きの一年をしめくくる『空飛ぶ馬』では、互いを思いやる二人の気持ちが生んだ謎を、円紫がにこやかに解き明かしていく。

 ミステリなのに謎以外の部分をきちんと書いているのがなんだか新鮮で、そこがひとつの特長といえそうですね。
 『織部の霊』では教授が子供のころ、『赤頭巾』では「私」が子供のころ、その場にとどめた思いや記憶が、丁寧に描かれています。他にも『胡桃の中の鳥』では、働く場という意味での社会に、女というものがうまくはまっていない茫洋とした不安が酔った友人たちと言い合う中で出てきてしまったり。うまく「恋愛」という概念になじめない「私」の気持ちが『赤頭巾』で表に出てきたり、それが『空飛ぶ馬』でやや軟化したり。
 もうひとつの特長はその描写の中で文学部らしい引用がぽんぽん飛び出すところでしょうか。

 感情や関係性は「私」として固定化されたものではなくて、以前に起こった事件のなかで抱いた感情をきちんと踏まえたうえで、読むたびにしっかり動いている。その継続性によさがみえる作品でした。


(欄外)
 ただ、「私」が変化するということは当然「私」と円紫の間の親密度もそう。
 そのせいで読んでいるうち、妻子持ちの円紫に「私」が恋愛感情をもってどろどろな感じにならないかと無駄にハラハラしてしまうので、円紫は独身か、もっとぐわっと年齢が上のほうがよかったなあ……。
 円紫がなんかかっこいいこと言ったりプレゼントしたりしても、円紫いいな~とはならず、「そうやって「私」をたぶらかさないでください!」みたいな気持ちがちょっとありますよね。
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