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〔本感想〕 家庭用事件 似鳥鶏

家庭用事件 (創元推理文庫)

◆ 日常ミステリ<市立高校シリーズ>短編集。相変わらずいざこざに翻弄される主人公・葉山。妹・亜理紗の意外な事実も明かされ、思わず過去作に手を伸ばした1冊。

 表紙を担当するイラストレーターが代わり、表紙だけでも楽しめる水彩風から、さっぱり目を引く当世風(?)になった、シリーズ7冊目。ちょっと味気ない。
 過去感想はこちら
 今回はタイトル通り、主人公・葉山の家族が中心の話が二編収録されています。


不正指令電磁的なんとか
的を外れる矢のごとく
お届け先には不思議を添えて


 この三編は、例のごとく文化部の活動が盛んな高校で巻き起こる「部活いざこざミステリ」。これがこのシリーズの得意技といいますか、「頼まれ葉山」の地位が確立してしまった不憫な主人公が、事件解決に奔走するお話です。
 まあ、葉山は証拠や証言を集める役回りで、最後には、卒業しても変わらず探偵役をつとめている伊神さんが全部持っていっちゃうんですけどね(笑)。伊神さんは葉山を育てようとして(ただ単に面倒なだけかもしれない)ときどき推理をさせているので、学年が上がった短編では、自分で解決に近づいたりもして、それが読者にはちょっと嬉しかったりもして。

 ヒロインの演劇部の柳瀬さん、同じく演劇部のミノ、映研の辻さん、吹奏楽部の秋野、出番の複数回ある人たちが増えてきて、だいぶにぎやかなシリーズになってきました。この人たちが協力者のときばかりでなく、ときには犯人だという事件もときどき起こるところがおもしろいんですよね。殺人ミステリでは、一度殺してしまった人間は刑務所行きで、こうはいかないですから。


家庭用事件
優しくないし健気でもない



 いっぽう、こちらはちらちらと出てきてはいた葉山の妹・亜理紗がメインになってくるお話。
 『優しくないし健気でもない』では、葉山の妹に関する、かなり意外な事実が明かされています。読者として気になるのは後づけなのかそうでないのか、というところですが、著者がブログで『柳瀬のかーちゃんの実家は北海道ですが、この設定全然使ってないです。』と書いていたのを見たことがあるので、この事実も後づけではなく眠っていただけだと予想します。


 いずれにしても、この話をするにはこの巻がベストのタイミングだったんですね、きっと。最初からこの設定を出してしまうと、これまでメインにはならなかった妹とのやり取りや家庭の場面で、別の力が働いてしまいますから。「優しいお兄ちゃん」「健気な妹」というバイアスなんかもかかったかもしれない。タイトルのように、「優しくないし健気でもない」と思ってもらうには、この形しかなかったような気がします。
 ひとつわがままな注文を付けるとしたら、短編ではなく、長編の一本として読みたいお話でしたね。

 というわけで、『優しくないし健気でもない』、解決後の兄妹間の心理描写も含めて特に気に入ったのですが、この短編は文庫書き下ろしのようなので、まだまだこのシリーズは楽しみですね。全体として、現代ならではのトリックも盛り込んだ満足度の高い短編集でした。

 
 不正指令電磁的なんとか   書き下ろし 
 的を外れる矢のごとく   ミステリーズ! vol.73 (2015年10月)
 家庭用事件   ミステリーズ! vol.46 (2011年4月)
 お届け先には不思議を添えて   放課後探偵団(2010年11月)
 優しくないし健気でもない   書き下ろし
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