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〔本感想〕 名著で学ぶ戦争論 石津朋之

名著で学ぶ戦争論(日経ビジネス人文庫)

◆ 西暦以前からの戦争・戦略にまつわる50冊を取り上げた書評本。現在の世界情勢の理解にも役立つ名著の数々が紹介されている。

 ヘロドトスの『歴史』に始まり、2000年の時を超えて読み継がれる『孫子』、クラウゼヴィッツとリデルハートという二大巨頭の著作に、文豪トルストイの『戦争と平和』、哲学者カントの『世界平和のために』、70年代のアメリカでデタント(緊張緩和)外交に携わったキッシンジャーの『回復された世界平和』……。

 多種多様な50冊に簡明な解説を付与し、紹介した本です。この分野は邦訳が多くないようで、邦訳のない原書が紹介されていることも。邦訳のあるものの中で興味を惹かれるものがあっても値段が張り、近隣の図書館にはほとんど置いておらず、手に取りやすさは完全に度外視した硬派な書評本といえるかもしれません。

 50冊のうちどれひとつとして読んだことがなく、有名な戦略書『孫子』の項目も興味深く読みました。孫子は『百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり。戦わずして人の兵を屈すは善の善なるものなり』を基本とし、戦争状態に陥ることを避けて勝利することが策としては上等だ、という姿勢のようです。だからこそ、戦争は避けられるべきものとして認識されている現代でも古びない。こうした指揮官ばかりだったなら、人類の歴史ももう少し血なまぐさくないんでしょうけどね。

 20世紀後半に書かれたものが増えてくると、核兵器が文章の中に登場します。
 社会的・物質的制約から、クラウゼヴィッツのいうところの「制限戦争」として推移してきた戦争が、無制限となった第1次、第2次世界大戦。産業の発達や、戦略爆撃の登場による戦闘員と非戦闘員の区別の消失……この巨大な戦禍に対して、核が登場して以降の戦争は、「制限戦争」に戻る様相を見せているのだとか。理由は簡単で、核を使えば互いの国が消滅するため。

 現実に存在する核リスクをどうとらえるかはともかくとして……。「制限戦争」の時代には無制限の戦争に適応したアメリカ軍では対応できないとし、朝鮮戦争・ベトナム戦争の失敗が挙げられている本。核が無用の長物と化す、国家対国家ではない戦闘が増えていくだろうとのべた本。こうした戦略思想家の与える社会への影響は限定的なものだという限界も示してはいますが、今の社会情勢に無縁でない話が次から次へと出てくるので、歴史や国際政治のジャンルのひとつとして知っておくことも無駄ではないと思える1冊でした。


(欄外)
 クレフェルト『戦争の変遷』の紹介文のなかで印象的だった言葉。
『戦争とは誰かが他人を殺したいと思うときに始まるのではなく、その個人やグループがある大義のために死ぬ覚悟ができたときに始まる』(244ページ)
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