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〔本感想〕 きらきらひかる 江國香織

きらきらひかる


◆ 善意で常識をふりかざしてくる現実を踏みこえて、夫婦になっていく二人の話。

 精神面に不安を抱えている笑子は、両親からも精神科医からも「結婚すれば変わる」と謎の理屈を受け入れるよう強要されて睦月と結婚。
 睦月はゲイですが、こちらも「長男なのよ」「医師がいつまでも独身じゃ格好がつかない」と謎の理屈を受け入れるよう強要されて笑子と結婚。

 睦月には作中で双子の半身とも形容される恋人・紺がいます。そのためそれぞれ別の恋人をもっていいという条件つきで、笑子と睦月は結婚します。もちろん両親には内緒で、終盤、そのことが原因で二人の友人や両親を巻き込んだ騒動が起こってしまいます。

 笑子はその騒動へ至る道筋の中でどんどん不安定になっていき、何かあるとすぐに泣きじゃくったり、底抜けに優しい睦月に対して「残酷な気持ち」を抱き、めちゃくちゃな八つ当たりをしたりもします。
 いっぽうの睦月は、笑子が向けてくるあまりにもまっすぐな感情に対して時に戸惑い、正面から受け止める自信がもてずにいる。自信のなさは、「自分が相手に足る人間かどうか」まで考えてしまう誠実さの裏返し。睦月は責められることなんて何もしていないのに、その誠実さが、外圧と相まって、笑子をさらに追い詰めてしまう。

 ただ、問題ばかりのなかでも、笑子と睦月は、相手に対してしっかり愛情をいだいているんですよね。そこが大きな救いなんです。彼女らは二人で一緒に生活しているだけですが、不安定の上にどうにか成り立っているささやかな日常が何よりの幸せで、それを維持するためなら、善意の顔をした常識とも必死に向き合おうとする。読者も、二人のあの日常が、どうにか形を保ってくれないかと願うようになる。

 笑子は自分の精神が不安定だということや、人から見た「不自然さ」も自覚していて、それを自分ではどうにも治せないから、余計に苦しんでいる。
 だから、その辛さをどうにか受け止めようとしてくれる睦月に対しては、恋人の紺と本当にうまくいってほしいと心から願っています。睦月と紺の間に子供ができればいいのに、とまで睦月にこぼすほど。

 最後は紺の助力や笑子のずるさに睦月の誠実さ、そして三人三様にいだいている愛情が、悲劇へ進む状況のなかでそれぞれに作用して、意外なところに着地します。
 多少いびつでも、私はこの三人のことが大好きです。
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