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〔本感想〕 九つの、物語 橋本紡

九つの、物語 (集英社文庫)

◆ 2年前に死んだ「お兄ちゃん」が帰ってきた。読書家で料理好きで女たらし、よく喧嘩もしたけど、それでもどこか憎めない「お兄ちゃん」が。

 唐突に帰ってきた兄との生活を始めることになった大学生の妹・ゆきなの視点で進むお話です。付き合い始めたばかりの香月君とのデート、兄とともに作る料理、兄と囲う食卓、兄の彼女(幽霊)との会話。そんなささやかな日常は、徐々に徐々に良くない方向へ歪んでいく。読者はゆきなに対して「そっちへ行くな」と伝えたい気持ちを積もらせながら、この「お兄ちゃん」がいる限り、すべてが破綻するような方向へは進んでいかないだろうと、心のどこかでは安心してみていられる。
 それでも、やっぱり、死んだ人間はいつまでもこの世にとどまってはいられない……。最後に幽霊だったとわかる話もいいですが、最初から分かっているほうが、より寂しく感じられますね。どうあがいても死者をよみがえらせるすべがないせいで。

 この長編にはもうひとつ特徴があり、それは全9章の話の中で、それぞれの章題に選ばれた近代の名作がかかわってくるという構成です。
 効果的に使われていたのは4章の『ノラや』ですね。「お兄ちゃん」がどこかへ行ってしまうのではないかと不安になるゆきなと、帰ってこないノラを待ちわびる主人公の気持ちがうまく合わさっていました。
 ただ、他の各章題の名作とこの物語との結びつきはとても弱いので、それを目当てに買うのはやめておいたほうがいいかもしれません。
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