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〔本感想〕 君の波が聞こえる 乾ルカ

君の波が聞こえる (新潮文庫)


◆ 特異な状況で生まれた友情

 北海道近くの海上に浮かぶ、地図に載らない巨大な構造物「四龍海城」。周辺の海域では失踪者が毎年何人か出るものの、都市伝説レベルをこえて伝えられることはありません。
 吃音がひどい中学1年生の健太郎は、友達もおらず、ぼんやりと四龍海城近くの海岸で波を眺めていました。泳げない健太郎は、潮が満ちてきてしまったことで慌て、四龍海城に逃げ込み、すぐに出ようとします。けれど目に見えない何かに阻まれてうまくいかず、門番は、出たければ出場料がいると言ってきます。そこからどうにかして出ようというのがストーリーの主な目的になります。

 城の中で、大人びた同年代の少年・貴希と出会った健太郎は、吃音に大きな反応を示さなかった貴希に好意を抱き、二人は友人になります。健太郎が、貴希の前では吃音を気にしなくていいと、徐々に自分の気持ちを素直に吐き出していくのは、見ているこちらもうれしくなってきます。
 しかし、長くこの城にいると、城人(しろびと)として強制労働に従事させられることになってしまうので、のんびりしている暇はありません。
 あとから入ってきた大学生の関とともに、三人は脱出する方法を探します。

 出場料がなにかは知らされない。でも、大人たちがいくら議論しても、それが何かはわからない。
 どうやら出場料は、モノではないらしい。たぶん、この紹介を読んだだけで、「ああ、そういうパターンか」とあっさり先が読めた方がいるかもしれません。私も、早い段階で展開の想像はついてしまったのですが、ラストシーンの予想がつくからといってつまらなくなるかというとそう単純でもなく……。むしろ、先が読めてしまうからこそ、この物語が光り出すとでも言えばいいのか。健太郎と、貴希や関との信頼関係が深まっていく中で、「それ」を差し出さなければ出られないというのが頭の隅にずっと残ったまま進んでいくんですよね。健太郎が素直で、貴希ほど真相に近づけないぶん、ひとつひとつの言動で、何とも言えない気持ちにさせられます。

 私と同じようにタイトルに惹かれた方は、たぶん、中身にも期待していい小説になるのではないでしょうか。


※単行本『四龍海城』の文庫化改題作品
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