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〔本感想〕 数学する遺伝子 あなたが数を使いこなし、論理的に考えられるわけ キース・デブリン(著) 山下篤子(訳)

数学する遺伝子―あなたが数を使いこなし、論理的に考えられるわけ

◆数学の生まれた日 「大嫌いな数学」を扱う能力は、すべての人間が持っている?

 数学、歴史学、考古学、言語学、音韻学、生理心理学、脳科学……。数学者である著者が、さまざまなジャンルにまたがって集めた(1999年時点での最新の)証拠をもとに、「数学の生まれた日」を探索していきます。
 数学の起源を言語に求めて、難解な公式の類をほとんど持ち出すことなく掘り下げていくその手腕はお見事と言うほかありません。

 数学の苦手な人間からするとつまずきの大きな理由でもありますが、数学は抽象世界を扱う学問で、数学で使われる記号や公式は、実際の世界には存在しません。
 そのため、人間だけにとどまらず、生物が数学を扱えるようになるためには、完全に架空のことを現実から切り離して(オフラインで)考える能力が必要になります。

 ほとんどの生物は、それができません。ぼーっと突っ立って現実からかけ離れたことを考えているあいだに殺されたら割に合わないし、ばかでかい脳を抱えてエネルギー消費を増大させ、生きのびる確率を下げるなんて、狂気の沙汰だからです。
 しかし、人類の祖先はある時期に、ハイリスク・ハイリターンの生存戦略をとるほかない状況に追い込まれ、試行錯誤の末にその能力を手に入れました。その能力は、脳の中に仮想の現実を造りだし、それに対するシミュレーションを行い、そのシミュレーションをもとに行動することを可能にしました。他の生物のように、現れた環境に適応するのではなく、ある環境を想定し、事前に対策を講じ、その環境が自分たちにとって住みやすくなるように変えてしまうことまでできる。

 この、現実の運動と切り離され、抽象的思考を可能にした「オフライン思考」は、脳の特定部位に損傷を負ったりしていなければ、ほとんどすべての人が扱えるようです。著者はオフライン思考の特殊型として、抽象的思考の最たるもの・数学を想定しています。
 つまり、数学が大嫌いなほとんどすべての人も、「数学する遺伝子」はしっかり持っていることになります。

 問題はどうすれば数学ができるようになるか、ですが、それは(私の能力不足により)ここで説明することはできません。
 ただ、現実に存在しない抽象的なことを扱うためには、あるていど訓練を続けるしかない、という、現実の厳しさはしっかり教えてくれつつ、「できるようになるかもしれない」という希望を抱かせる部分もあり、バランスよく苦手意識を除いてくれるものでした。
 知的好奇心を刺激されまくる本で、学際的な、学問ジャンル横断本が好きな方におすすめです。


(番外)
・おもしろかった話1
脳の中で、指のコントロールを指令する場所と、数字をカウントする場所が重なっていて、十進法は両手で指折り数えることから自然に生まれたかもしれない、という話。

・おもしろかった話2
露店で働いていて計算が上手くできる子供が、学校のテストになるとまったくできなくなってしまう。数学は極度の集中を必要とするため、必要に迫られなければうまく問題を解けない人たちがいる。

・おもしろかった話3
二本足で立つようになったことで、声帯が変化し、現在のようなあるていど複雑な発声方法が可能になった。

・おもしろかった話4
世の中でかわされる会話の3分の2はゴシップ。見知らぬ場所の見知らぬ出来事を見てきたように話したり、推測したりする力は人類の進化にとって重要だった。

・おもしろかった話5
数学が苦手な人でも、小説を読んで、架空の人間関係のような高度に抽象的なものを理解できる。それは日常と地続きで想像できるものだから。
しかし数学はそれより単純にもかかわらず、難しい。それは日常(現実)と地続きではないから。

・どうでもいい感想
普通に書かれている文章より、かみ砕いて書かれているはずの例えのほうがわかりにくい、という珍しいタイプの著者でした。
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