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〔本感想〕 おかしなジパング図版帖 モンタヌスが描いた驚異の王国 宮田珠己

おかしなジパング図版帖 -モンタヌスが描いた驚異の王国-


◆ 極東の島国について、かなり間違った認識がもたれていた時代の図版がたっぷり紹介されている本。

 モンタヌスの『東インド会社遣日使節紀行』と、ケンペルの『江戸参府旅行日記』から、多くの図版が引用されている本です。
 ケンペルは訪日した経験をもとに多くのデッサンを残し、亡くなったあと刊行された著書の図版は、本人の意図とは離れたものだったとはいえ、かなり日本の姿に近いものが描かれています。
 しかしいっぽうの『東インド会社遣日使節紀行』の著者モンテヌスは一度も日本に行ったことがなく、文献や想像(妄想)が著述のもとになっていて、挿絵がとんでもなくおかしなことに。天守がだだだっと連なった奇妙な城があったり、人力車の引き手の部分がなぜか後ろについて後部から押す形になっていたり、七つの首がある馬がいたり、意味のわからない絵が盛りだくさん。強烈な絵の連続のせいで見慣れてしまって、後半は飽きてくるほどでした。

 合間のコラムでは、デタラメに書かれた日本地図や、この本のタイトルにも触れられています。ジパングが日本とは別の島として描かれている地図も多いらしく、今は黄金の国ジパングが日本を指していたとは言い切れなくなっているのだとか。
 ただの丸っこいてきとうな島が二つ並んで、上がジパング、下が日本、とした地図はなかなか笑えました。これが数百年前の話ですから、ヨーロッパにとっては、本当につい最近まで未知の島だったんですね……。伊能忠敬の作った素晴らしい地図を見て、ヨーロッパ諸国が日本への認識を改めた、という怪しげな逸話を聞いたことがありますが、あながち伝説でもないのかなと。

 現代に近づいてくると、より正確な日本の情報が伝わるようになり、おかしな妄想の余地はなくなってしまいました。が、著者は、写実性の高い絵よりも、わけのわからない島国を想像たくましく描いたこちらの絵のほうにおもしろみを感じる、と言い切っています。

 人工衛星や交通網の発達した現在、地球における人跡未踏の地はほとんどなくなり、未知の土地は物語の中にしか存在できなくなってしまいました。結局この世界にアヴァロンはなく、ヴァルハラも蓬莱も黄金の国もなかった。
 『東インド会社遣日使節紀行』の挿絵は、未知の世界がまだなんとか存在できた時代に描かれました。物語などにできることのひとつは、すべてが既知になってしまった現実世界を少し離れて、彼らが想像たくましく描き出したような未踏の地を、新しく作り出していくことなのかもしれないですね。
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