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〔本感想〕 ラオスの山からやってきた モンの民話 安井清子

モンの民話―ラオスの山からやってきた

◆ 著者や協力者によって現地で収集された民話が11話収録。1話ごとに、民話の話者の写真や話者の人となりなどが丁寧に紹介されている。


 モン族というのは中国で苗(ミャオ)族と呼ばれている人々と同グループで、この本はその中でもラオスに住む人々の民話を取り上げているようです。
 支配を狙った漢民族とたびたび衝突、清朝末期にも圧政に耐えかねて大規模な反乱を起こし、数十万人とも100万人以上とも言われる人々が殺害されてしまった歴史もあるらしく、「中国人に見つかったら捕まってしまう」というような台詞も出てきます。加えて共産陣営と反共陣営にわかれて殺し合った時期(1953~1975年)のこともひとつの背景として取り込まれるなど、文字を持たない民族ならではのスピード感がありますね。

 ただ、もともと神話や民話には血なまぐさい話も多いので、話そのものにそこまで違和感はありません。各地に残る民話に共通する部分も多いです。


ノォとシーナー
 たとえば『ノォとシーナー』は、少女・ノォが意地悪な継母とその娘に徹底的にいじめられています。この時点で先が読めた方もいるかもしれませんが、細部はやはり民族特有のもの。

 継母にそそのかされた父に母が殺される前、母はノォに、食べ物や着物がないときは鉢植え(足つきプランターのようなもの)を覗き込むように言いつけ死んでゆきます。
 あるお祭りの日、その言葉を思い出したノォは、鉢植えのなかから着物を取り出してお祭りに出かけてゆきます。そこで笙吹きの青年シーナーに見初められる。

 『シンデレラ』ですね(笑)。日本にも『米嚢粟嚢』という似たような話があって、そちらや『シンデレラ』では、ハッピーエンドなのですが……。こっちは継母とその娘・チェンが手ごわい手ごわい。ありとあらゆる手を使ってチェンをシーナーの嫁にしようとする継母、チェン(義妹)にナイフで殺されるノォ。結局ノォを殺したチェンと生活するシーナー。

 えげつない展開にびっくりしながら読み進めると、シーナーを奪ったチェンを憎むあまり、鳥として、竹として、指輪として蘇るノォ。最終的には人に戻って発見され、ノォとシーナーは「ふたり仲良く」チェンを殺害。チェンを殺したことを知らせずに歓待した継母にチェンの肉を食わせて、継母が帰る途中で本当のことを告げる。継母は『お前たちを呪いつづけてやる』と絶叫。
 めでたしめでたし……じゃないですよ。怖いよ。
 導入は本当に『米嚢粟嚢』や『シンデレラ』と似たような話なんですけど、こっちはR-15指定ですね。


学校に行きたかった娘 ワァの話

 そうしたどろどろの話もありつつ、『学校に行きたかった娘 ワァの話』のような悲恋の物語もあります。
 「女は学校に行く必要はない」と言われた少女が重い病の振りをして、ついには学校に行けるようになる。男として通うという条件付きで許されたワァは、いちばんの親友・ダァにもそのことを隠して学校生活を送りますが、家の都合でよそへ嫁ぐことになり、学校を中退することに。
 ワァは先生に本当は自分が女だったことを明かし、ダァへ伝えるように言って学校を去ります。 
 
 追ってきたダァはワァに思いを告げますが、ワァは父に逆らうことはできず、泣きわめきながらも結局親から言われた男と結婚。ダァは、七日後に僕は死ぬ、家族には君が婚礼で通る道、ナスの実がなる平地のところに埋めておくように言う、と言って、ワァのもとを去ります。
 実際にダァは七日後に死に、ワァは婚礼の行列を抜け出してそのお墓に駆け寄ります。途端に白い雲ががちこめたと思ったら、ワァの姿は消え、ふたりの蝶が墓の周りを舞い遊んでいました……と、そんな結末のお話。



 特に印象に残った二つを挙げましたが、これ以外でも完全な「めでたしめでたし」の話は少ないですね。
 著者は、戦闘と逃避を強いられてきたモン族の歴史がそうさせたのだろうと分析しています。このような民話の内容への言及、解説が各話の最後にはついているんですが、ときおり、「豊かな」「古き良き」モンの生活への崇敬も書かれています。
 山を下り、現代人と同じような悩みを抱えることになったモン族の人々を見て、悲しいと思う気持ちはもちろんわかりますが、貧しくとも豊かな元の生活をしていてほしかった、というのは、素朴な生活を失った側からの、価値観の押し付けに過ぎないような気がしますね。女の扱いが従属的であったり、乳児の死亡率が高かったり、問題もありますから……。

 そうした感傷を引っ張り出してこないときの著者の解説は面白く、特に、死者を弔う場で吹かれる「ケーン」という笙についての話は好きでした。
 音色一つ一つに意味する言葉があり、それらは死者へこの世からあの世へ向かう道筋を示す。そして音色の言葉を解さない人間は吹くことを許されない。こういったエピソードを示されたほうが、「現代社会の我々より」なんて聞き飽きた対比よりも、モン族の「豊かさ」というものがストレートに伝わってきます。
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