スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

〔本感想〕 物質から生命へ――自然発生説論争 ヘンリー・ハリス

物質から生命へ―自然発生説論争


◆ 無生物から生命の生じる時代があった。


 図書館でこの本を見かけて、こういった論争があったことを初めて知りました。今から見れば、生命は無生物から突発的に生じないという知識は当たり前ですが、生じても何の問題もない時代があったようです。牛の臓器から生命が生じると考えられていたり、錬金術的な手法によっても生命が生じると信じられていたり。
 時代が下ると宗教的制約が薄まり、自然発生説の検討に科学的手法が用いられ始めます。結果として「さすがにそれはないだろう」と自然発生説が下火になったころ、微生物の発見によって、このきわめて微細な生物に限定した自然発生説が再度加熱していくことに。

 科学的手法が用いられるようになってからも、数世紀にわたって自然発生説に関する議論が続けられ、決着を見たのはパストゥールやティンダルによって完全に息の根が止められた19世紀、というのは意外でした。中世、学問も掌握していた教会が初めは自然発生説のほうを支持していたことも理由のひとつのようですが、あまり宗教のしめつけが強くなさそうな東洋ではどんな研究がされていたんだろう……と別の興味もわいてくる話です。

 それにしても、明白に否定されてもなお(20世紀になってもなお)、覆された根拠を元に自然発生説を主張し続けた人が居るというのには驚きます。おそらくこのようなことはそこらじゅうで起きていて、いくら言っても他人の意見を聞き入れない一部の人はどうしても出てきてしまうものなんでしょう。どんなに厳密な実験を行っても完全に「ない」と証明することができないものもあるから、そこが科学的手法の狙われやすいところですね。

 けれどこの本の訳者は、誤った主張を繰り返してそれを検討しようとする人間がいたから、この手の研究が旺盛になった面もあり、現代の微生物学や病理学の源流のひとつと評価していて、参考になりました。多様性というのは、そういうことなんでしょう。そもそもの生命の起源や宇宙の始まりの謎に挑もうとしている人々も、この論争の中から生まれてきたのかもしれません。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。