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〔本感想〕 谷崎潤一郎フェティシズム小説集 谷崎潤一郎

谷崎潤一郎フェティシズム小説集 (集英社文庫)

◆ 多くの男が女を下に見ていた100年前、女が男を支配しコントロールしている数々の短編を発表していた谷崎潤一郎。怖い。


 谷崎潤一郎が青空文庫で読めるようになるとは知らず、何年か前に積んだ小説。『幻想ギネコクラシー』という漫画でモチーフにされた『刺青』が目当てでした。
 短編集は『刺青』からです。現代では忌避感がもたれている刺青ですが、この話ではそんな現代の感覚をあざ笑うかのように、刺青師の主人公が、強引に女の人を口説き落とし、背中に大きな蜘蛛の刺青を彫ってしまっています。

 かつての日本の様子が描かれている最古の文献『魏志倭人伝』には、顔に刺青を施した異様な人々(=日本人)をあらわす一文があるようです。下記の文章を知って以来、刺青を彫るという行為のもつ意味に興味があったので、このお話にも惹かれて興味深く読むことができました。

『倭では、男子は成人も子供もみな顔や体に入墨をしている。(中略)今、倭の水人は海中に潜って魚や蛤を捕え、体に入墨して大魚や水鳥から身を守ってきたが、後にはやや飾りとなった。倭の諸国の体の入墨は、国々によって左右や大小などにちがいがあり、身分の尊卑によっても異なる』 (弥生ミュージアム 魏志倭人伝)

 やはり『刺青』の中でも一種宗教的とでも言おうか、「彫る」という行為がどこか儀式めいて描かれています。
 それまでどこかさっぱりとした雰囲気だった女は、蜘蛛を彫られたあと、今までの自分を捨て去る。そして刺青師は、世の男を思うがままに操ってしまう雰囲気を女から感じるようになる。その変化も突飛じゃないと感じられるのは、刺青という奇妙なもののなせるわざなんでしょうか。

「おれはお前をほんとうの美しい女にするために、刺青の中へおれの魂をうち込んだのだ、もう今からは日本国中に、お前に優《まさ》る女はいない。お前はもう今までのような臆病な心は持っていないのだ。男という男は、皆《み》なお前の肥料《こやし》になるのだ。……」(19ページ)

「お前さんは真先にわたしの肥料になったんだねえ。」(21ページ)

 この短編集で出てくる他の性癖はあまり理解できませんでしたが、残念ながら『刺青』の刺青師の気持ちは理解できてしまいました。いやだって、背中に大きな蜘蛛の刺青した女の人いたら誰だってすごいなと思っちゃいますよ(言い訳)。

 他には、妙な魅力を持つ女性を見下しながらも彼女の持ち物に異様な執着をみせる学生(『悪魔』)、憎しみを相手に悟られぬように発散するのが大好きな青年(『憎念』)、臨終の間際、足で顔を踏んでくださいとお願いするご隠居(『富美子の足』)や、少女の前で子供返りして遊ぶことを平然と述懐する資産家(『青い花』)、15歳くらいの少女に尻を鞭で打たせて喜びの声をあげる大学の先生(『蘿洞先生』)など……。関わりあいになるのをご遠慮したい人達ばかりが登場します。
 『富美子の足』で、青年とご隠居が犬の真似して富美子の足にじゃれつく場面があり、それがわりと馬鹿っぽくて笑えましたが、そんな感じで面白がれる方は読んでみるとはまれるかもしれません。
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  • 2017/09/07 (木)
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