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〔本感想〕 伏 贋作・里見八犬伝 桜庭一樹

伏―贋作・里見八犬伝 (文春文庫)

◆ 遠い過去の名作を他にも『贋作』で読んでみたくなる。

 祖父とともに猟師として暮らしていた十四歳の少女・浜路が、祖父の死を受け、兄・道節を頼って江戸にやってきたところから話は始まります。
 この話のもとになっている『里見八犬伝』は、親の失言で妖犬・八房に嫁ぐことになった伏姫の死がきっかけとなり八犬士が活躍する物語のようです。そちらでは一匹と一人の間に子供は生まれませんでしたが、『贋作』では八房と伏姫が子を成し、その子孫が江戸を騒がす厄介者・「伏」(ふせ)として登場します。
 伏たちによる犯罪が後を絶たないため、幕府は高札を掲げて伏狩りを奨励。山ではすぐれた猟師であった浜路も、背中に担いだ猟銃を使い、兄とともに伏狩りに参加していきます。

 『里見八犬伝』で、犬山道節は八犬士のひとり、浜路は主人公格の犬塚信乃の許嫁。二人が『贋作』において伏を狩る側になり、浜路は信乃に猟銃を向けています。この配役の転換がすでにおもしろく、本編を読んでいた人も、『贋作』ならではの楽しみ方ができるのではないでしょうか。本来は味方同士、慕うもの同士のこの立ち位置の差が、そもそも狩るものと狩られるものにさほど大きな違いはないということを暗示してもいますしね。

 浜路は、市井の伏たちを見抜く抜群の嗅覚を持ち、信乃をはじめとした伏たちを追い詰めていく。けれど見た目には人間としか見えない伏を狩ろうとしていくうち、狩るものと狩られるものにわかたれている現状に、戸惑いを覚えるようになります。信乃のこぼした命を惜しむ言葉の意味を、死に直面して初めて浜路が理解する場面、あそこは特にいい。
 そして、それでも、命を削りあう。最後には猟師の血と犬の血がお互いに勝るんですよね。血なまぐさいのにどこか清らかなお話でした。
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