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〔本感想〕 レクイエム アントニオ・タブッキ

レクイエム

◆亡くなった人たちを間接的に悼むのではなく、亡くなった人たちに直接会いに行ってしまう自由な小説


 書評サイトのレビュアーのかもめ通信さんがよくタブッキについて書いてらっしゃって、興味をもち、手に取ってみました。

 ある男が蒸し暑い季節のポルトガルの街をめぐり、いまはもう亡くなってしまったさまざまな人たちに会っていく不思議な小説です。遠く昔に亡くなってしまった高名な詩人に会うため待ち合わせをしていたはずが、約束の相手は一向に現れない。やがて男は夜と昼の時間を間違えた可能性に気付き、相手が来るまで街を歩くことに。

 現実と夢の境が溶け出してしまったようなお話なのですが、それは会話でも同じ。かぎかっこの一切出てこない独特の会話文が、主人公の思考と口に出した言葉の境を溶かしてしまって、それがまた心地いい。ふだん、会話の最中にはそんなに深く考えごとをしていないはずなので、間隔と境のなさが生活のリズムみたいなものを生み出しているのかもしれません。
 そのリズムに乗って、宝くじ売りのおじさんや、亡くなった親友、電車の車掌、バーテンダー、かつての恋人、若いころの父などと出会い、最初に約束していた詩人との食事の場面へと話が転がっていきます。

 自殺したかつての恋人にまつわる話がかろうじてあらすじめいたものを提供していますが、恋人と会う直前で、その場面は終わっています。他にはあらすじらしいあらすじもなく、主人公と一緒に旅をしているだけ。それが楽しい。
 亡くなった詩人から主人公がどんな影響を受けたかを語らせるのではなく、亡くなった詩人に会いに行って実際におしゃべりさせてしまう自由さが、この作品のとてもいいところ。亡くなった人々へのレクイエムを、湿っぽくなく、どこかからっとしたものにしてしまったのは著者のスタイルなのか、ポルトガルの風土なのか。いずれにしても初めてのタブッキ、楽しく読むことができました。
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