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〔本感想〕 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史(下) 佐野眞一

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 下 (集英社文庫)

◆ 著者のスタンスは、沖縄への攻撃的言説や、沖縄を聖者化・被害者化した紋切り型の「大文字」言葉にくみするのではなく、ひとりひとりの人生を積み重ねた「小文字」言葉で語るというもの。


 この巻で扱われるのは、基地問題や米兵の犯罪、芸能界の事情や琉球王国を代々治めた尚家の戦後などについてです。基地問題の先鋭化と経済的事情、退職間際に米兵の性犯罪の数々を記録した写真(捜査にストップがかかった事件の写真)を泣きながら燃やす刑事。沖縄アクターズスクールから東京の事務所に吸い上げられていく女性タレント、尚家の盛衰。これだけのことを一冊の本にまとめられる人なんて、著者以外にいないのではないかと思わされます。

 アメリカや自民党や日本国民の都合によってこじれ、鳩山政権時代にさらにこじれて、反対運動が先鋭化してしまった基地問題。何の見通しも立たないまま県外移設と言い切って最終的には放り出してしまった鳩山元首相について、著者は取材対象者の言葉も借りて容赦なく批判しています。
 また、仲井真元知事の不誠実な政治姿勢を取材で掴んだあと、「県内移設容認をして辞任する可能性」に2010年時点で触れた記者にも話を聞いていて、著者の情報収集力はかなり高いなと改めて思わせる記述も。

 尚家に関しては、「琉球新報」が琉球王国最後の国王・尚泰の四男、尚順が発起人となって作られたということは初めて知りました。日本に滅ぼされた旧琉球王国の意見を発信するために作られた新聞社。活発な批判精神の源が少し理解できたような気がします。
 それから文庫版で加筆された部分は2011年4月なのでわりあい現在の状況に近く、尖閣諸島がなぜ民間人の所有になっていたかや、石油埋蔵の噂が立ってから急に領有権を主張しだした中国のことなど、尖閣をめぐるあれこれが語られています。

 「小文字」を積み上げる著者の言葉は上巻の大仰な筆致に比べてずいぶん落ち着いて、おしつけがましさや違和感をそこまで感じることなく読むことが出来ました。上巻はアンダーグラウンドのことが中心で、暴力の匂いが濃すぎる世界にうんざりしていたので、下巻の読後感のよさは意外です。もし読まれるなら下巻だけ読むのをおすすめします。
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