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〔本感想〕 消失グラデーション 長沢樹

消失グラデーション (角川文庫)

◆ おそらく、未読の方が表紙とタイトルから想像しているよりもずっと楽しめる、本格的な青春ミステリ。タイトルにもすでに、謎解きの鍵が。


 去年の十二月に初めて読んだ『ミステリーズ!』という雑誌に著者の連載があり、なんだか好きになれそうだと思ったので、作品を調べて手に取ってみました。
 書店で平積みされているのを見かけたときはまったく興味を惹かれなかったのに、偶然からこうして手に取ることになるので、本選びはやっぱりおもしろいですね。

 話の始まりは、高校2年生の椎名康がバスケ部の練習を抜け出し、校内の死角へ女子を連れ込んでいたところから。そこへ、クラスメイトの樋口真由が踏み込んできます。理由をただした椎名に対して、樋口は、録画の邪魔だからやめてとばっさり切り捨てます。

 実は椎名たちの通う藤野学院、不審者「ヒカル君」が学校に侵入して生徒の制服や私物を盗んでいく事件が起きていました。校内には防犯カメラが設置されたばかり。けれど椎名がいた場所に気付いた樋口が、校内唯一の侵入口となるそこへカメラを設置し、念のため警戒に当たっていたんです。
 樋口とはそれなりに親しい椎名も、行きがかり上、「ヒカル君」への警戒活動に協力することに。

 いっぽう、椎名の所属するバスケ部では、ひとりだけ突出した存在である網川緑を中心に火種を抱えていて、あるときそれが爆発してしまいます。
 椎名は、血まみれで倒れている女子バスケ部員を発見。そして、背後から何者かによって気絶させられた三十分の間に、目の前から血まみれの女子は消えてしまっていました。

 欲望をエスカレートさせた「ヒカル君」の犯行なのか、はたまたバスケ部の関係者の犯行なのか?
 思っていることがすぐ顔に出て、暴走しやすいわりに意外と引っ込み思案な椎名と、冷静にものごとを判断するキレ者、樋口のコンビが、事件解決にひそかに乗り出します。

 この事件に使われているのはさほど珍しくないトリックです。伏線の張り方が下手だと、探ろうとしてもいないのに薄々勘付きながら読み進めなければいけないことになるんですが、この作品に関してはきちんと騙されることが出来ました。
 登場人物に対する印象がガラッと変わってからも他の謎は残ったままで、その一変した登場人物たちの動きを辿って読んでいくのがとにかく楽しいんですよね。
 驚きそのものよりも、はじめは別のことが理由だと勝手に思っていた部分で、本当はそうだったんだと腑に落ちていく、その部分が、こういったトリックの楽しさのような気がしますね。驚きの「実」の部分は、大きく言ってしまえばなんでもいい。

 もちろんミステリの部分だけじゃなく、青春の苦い部分も甘い部分も存分に描かれています。グラデーションのさなかにある少数者たちに、事情は違ってもみんなが共有しているはずの光が当てられていて、そこも気に入った理由のひとつです。
 このトリックの組み上げられた動機を、まったく理解できなくなる時代がやってくるといいですね。
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